自己紹介

ディルウィード:こんばんは。日々の冒険や生活に忙しいところ、集まってくれてありがとう。僕はディルウィード・ダンデライオン。僕ら夫婦の身の上話をさせて貰うことになった。少しばかり入り組んだ話題になるかもしれないけれど…秋の夜長に耳を貸してくれると嬉しい。――こちらは妻のゲットウだ。

ゲットウ:お初にお目に掛かります。ゲットウ・ダンデライオンにございます。今日は私達の出会いと半生、我が友リンデン、そして我が子、ウイキョウについて語ることといたします。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

自分たちの立ち位置…生存兼ウイキョウ非ヒカセン時空

ディルウィード:さて……今ゲットウが少し触れたけれど、僕たちの間には大切な息子…ウイキョウがいる。けれど、僕ら家族をとりまく顛末は、どうやら『二通り』あるようでね。一つ目は今この場所で話している僕たち親子がこの星のいち住民として、共に生き残った世界。そして、もう一つは……

ゲットウ:――私達夫婦が命を落とし、生き残ったウイキョウが、『光の戦士』として名を上げる世界です。

(ディルウィード、頷く)

ディルウィード:原理は分からないけれど、今彼女が言ったように『別の世界、別の時空』といった方が伝えやすいかもしれない。途中までは同じで、ある時点から大きく異なっているのも特徴だ。普通は認識することも無い事象なのだろうけれど……ある日、とても鮮明な『夢』のようなものを見て、その事実を知ることが出来たんだ。……とても複雑な気分だったよ。大切な家族が、悲惨な死を遂げ、離れ離れになってしまうのだから。

ゲットウ:ええ。そのとおり。……他方で、そこにはこの世界の私達一家が得られなかったものがあることも事実。なれば、ほかならぬ私たちが覚え、語るべきであると思うのです。

ディルウィード:ああ、そうだな。……そういう訳で、今日は『向こう』の僕たちの軌跡を中心に語っていこう。

(ディルウィードの来歴)

ディルウィード:……さて、まずは僕の生まれから語ろうか。僕はサベネア島のデミールの遺烈郷の中流家庭に生まれた。母は代々続く錬金術師の家のアウラ族、父は遠い地方出身のヴィエラ族…いや、シャトナ族といったかな。旅の途中で修めた占星術を得意としていた。 幸い、サベネア島は移民によって形成される社会だったから、そのこと自体でひどい差別を受けることは無かった……のだけど。僕は木登りも出来ない程の運動音痴だったから、素材集めや外遊びでは他所の子に馬鹿にされて悔しい想いをしていた。幼い僕はその度に母に泣きついたものだけど、「ウチは先祖代々武に劣る一族だから諦めたほうがいいよ!」とバッサリ!いじける僕に父は「委縮することはない、知を以ってなすべきことを成せばいい」と声を掛けてくれたりした。こうして僕はやや大雑把ながら愛情深い母と寡黙な父に見守られて穏やかに、平凡に育っていった。

――そんなどこにでもある家庭に変化が訪れたのは10歳の頃だった。ガレマルドへ留学していた母からの手紙が……ぽつりと来なくなったんだ。心配になって父に事情を訪ねたけれど、「便りが無いのは元気な証拠だろう」と諭され、心細さを抱えながら勉学に日々を費やしていた。

…取りあえず僕の子供時代はここで一旦一区切りにして……ゲットウ、お願いできるかな?

(ゲットウの来歴)

ゲットウ:ええ、大丈夫よ。では今度は私の出自についてお話しいたします。

――私はドマのヒオリ家の生まれにございます。蛇の口南部に領地を構える武家であり、リジン家に仕える家でもあります。……数百年前の内乱で賊軍側に与した経緯もあって、家の地位はけして高いものではございません。ですが、小規模ながら諸外国との交流も盛んで、革新と伝統を両立した、尊き一族でございました。

そんな一族の当主家に生まれた私ですが、当初は男児として育てられておりました。……双子の弟、サンニンが非常に病弱であったためです。

私は一家の『嫡男』として武芸――剣術を学ぶことになります。指南役として分家のヒヅチ家からキンポウという壮年の男が派遣され、私達姉弟の子育てにも深く関わっておりました。

私はキンポウとの鍛錬の傍ら、病気がちのサンニンを連れ出して外の空気を吸わせ、サンニンは少しでも私や一族の力になりたいと勉学に励むようになりました。そんな私達をキンポウはいつも傍らで見守っていたのを今でも覚えております。